十九世紀英国の基金立文法学校 チャリティの伝統と変容
十九世紀英国の基金立文法学校 チャリティの伝統と変容
本商品は「旧ISBN:9784423820223」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2000/03/01
有名パブリック・スクールの多くは、チャリティ(市民公益活動)によって創設された基金立学校である。19世紀教育改革期、国民教育全体の原資として再編が期待されたにも拘わらず、基金立学校はなぜ中流階級の中等教育機関として、国家統制を回避し独立セクターの中にその公益性を閉じ込めることになったのか。その過程を階層統合の挫折として捉える本書は、王立委員会報告書など公文書からその実態を解明する。教育理念・教育内容を巡る問題を、従来看過されてきた財政基盤との関わりで法制史的に論じた教育史の労作。
【目次より】
はしがき
序論 問題の所在と研究課題の設定
第I部 一九世紀初期基金立学校の実態と再編課題
第一章 基金立学校の基本的形態
第一節 課題の設定
第二節 基金立学校の基本的形態
第三節 基金立学校のチャリティ管理の法制
第二章 基金立文法学校における「エルドン判決」の意義
第一節 課題の設定
第二節 リーズ文法学校事件(一八〇五年)
第三節 文法学校法(一八四〇年)
結び
第三章 基本財産(endowment)をめぐる論争
第一節 課題の設定
第二節 「基本財産」の濫用の告発
第三節 古典派経済学の「基本財産」論
第四節 ロバート・ローの「基本財産」批判
結び
第II部 チャリティの監督機関の創設と基金立学校の改組構想
第四章 産業社会におけるリベラル・エデュケーション論争
第一節 課題の設定
第二節 社会的地位の象徴としての古典語
第三節 ニューマンのリベラル・エデュケーション論
第四節 J・S・ミルのリベラル・エデュケーション論
第五節 セジウィックのリベラル・エデュケーション論
第六節 ハックスレイのリベラル・エデュケーション論
第七節 アーノルドの教養(culture)論 完全性の追求
結び
第五章 チャリティ監督機関の設立と中流階級教育の高揚
第一節 課題の設定
第二節 執行委員会の設置とその活動
第三節 中流階級の教育要求の高揚
第四節 「中等教育」(secondary education)概念の形成
第六章 基金立学校の改革構想
第一節 調査対象校とその現状分析
第二節 中等学校の三類型構想と一般教育の重視
第三節 基本財産の改組に関する勧告
結び
第III部 基金立学校の再編過程と二元的セクターの形成
第七章 基金立学校委員会(一八六九─七四年)の政策執行とその性格
第一節 問題の所在
第二節 基金立学校法案(一八六九年)の審議過程
第三節 基金立学校委員会の政策執行
第四節 基金立学校委員会の性格
第八章 基金立学校への公費補助
第一節 一八八〇年代の基金立学校の改革
第二節 ロンドン・カウンティ参事会の中等学校への公費補助
第三節 中等学校の多様な形態
第四節 中等学校調査
第九章 中等教育における公的セクターの成立
第一節 課題の設定
第二節 教育行政組織化への要因
第三節 中央教育行政機構の再編
第四節 中等教育の公的セクターの成立
第五節 教育行政改革の到達点と限界 第六節 公立中等学校の成立
結論
あとがき
年表
文献一覧
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著者
腰 英一(ミヤコシ エイイチ)
教育学者。東北大学名誉教授。東北大学教育学部卒業。専門は、教育学、教育社会学。
著書に、『比較教育学事典』(共編者)『学校と大学のガバナンス改革』(共著)『比較教育制度論』(共著)『19世紀英国の基金立文法学校』『地方教育行政の研究』(共著)『イギリスにおけるIB校と多文化教育に関する調査研究』『校舎が変わる』『国境を越える子どもたち』『国際バカロレア』『地方教育行政と学校事務』『国際的学力の探究』(共著)『現代日本の教育と国際化』(共著)などがある。