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中欧の模索

中欧の模索

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本商品は「旧ISBN:9784423710746」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2010/02/01

「中欧」とは、単なる地理的な名称ではなく、歴史的・政治的に構成された概念である。冷戦の終焉とともに歴史の表舞台に回帰したこの概念は、多文化・多民族が共存するユートピアを想起させる一方、ドイツ帝国主義やナチスの「生存圏」を正当化するイデオロギーとして忌避されてもきた。本書は、この「中欧」という概念に着目し、それを近代ドイツの自己意識の根源に関わる問題として捉えることによって、従来の研究とは異なるドイツ・ナショナリズム像を提示する。1848年革命期の中欧連邦構想から、第一次世界大戦時の「中欧」をめぐる国際的な論争、そしてヴァイマル共和国期の「ヨーロッパ合衆国」構想とナチス時代の「広域秩序」論。これら「中欧」をめぐる議論の多角的・実証的検討を通して見えてくるのは、国民国家中心的な視座を超えた、重層的なドイツ・ナショナリズム像である。近代ドイツにおけるナショナリズムと「中欧」の関係を問いながら、地域主義とナショナリズムが絡み合う現代世界にも歴史的洞察を与える試み。

【目次より】

凡例
序章 問題の所在 ドイツ近現代史と「中欧」
 一 「中欧」とは何か
 二 ドイツと「中欧」
 三 本書の目的と構成
第一章 「中欧」という視座 ドイツ・ナショナリズム論の再検討
 第一節 ドイツ・ナショナリズム再考
 一 ナショナリズム研究
 二 ドイツ・ナショナリズムの語られ方
 三 近年のドイツ・ナショナリズム研究
 四 本書の立場
 第二節 対象と分析視角
 一 対象と手法
 二 分析視角
 三 各事例の位置付け
 四 欧州統合史との関係
第二章 「国民国家」か「中欧」か 
  ドイツ問題とコンスタンティン・フランツの中欧連邦構想
 第一節 一八四八年革命以降のドイツ問題
 第二節 フランツとは誰か
 一 経歴 プロイセン生まれの反プロイセン主義者
 二 様々なフランツ像 先行研究の問題関心
 第三節 フランツの中欧連邦構想
 一 ドイツ統一の方途
 二 「ナショナリティ原理」批判
 三 中欧連邦の構成
 四 中欧関税同盟の提唱
 五 連邦主義の歴史哲学・政治哲学
 六 連邦主義とドイツ
 七 「他者」の問題 ロシア、アメリカ、ユダヤ人
 八 小括 フランツの両義性
 第四節 二〇世紀のなかのフランツ
 第五節 フランツの遺産
第三章 「中欧」の夢と現実 フリードリヒ・ナウマンの『中欧論』とその反響
 第一節 ナウマンと「中欧」
 一 『中欧論』の位置と意義
 二 経歴 キリスト教社会主義から政治的自由主義へ
 三 第一次大戦以前のナショナリズムと二重君主国観
 四 『中欧論』の成立
 第二節 「中欧論』の検討
 一 「戦争の果実」
 二 戦後国際秩序の展望
 三 「中欧」の実現に向けて
 四 「中欧史」の構築 ナウマンと歴史の問題
 五 「中欧」の拡大 『ブルガリアと中欧』を中心に
 六 小括 ナウマンとドイツ・ナショナリズム
 第三節 『中欧論』の反響
 一 反響の理由
 二 反響の諸相
 三 小括 『中欧論』のインパクト
 第四節 ナウマンの遺産
第四章 「ヨーロッパ合衆国」から「広域秩序」まで 
  ヴァイマル共和国期・ナチス期における「中欧」の分岐………
 第一節 戦間期における「中欧」の位相
 一 戦後国際秩序と「中欧」
 二 先行研究の陥穿
 第二節 「中欧」から「ヨーロッパ合衆国」へ 
  ヴィルヘルム・ハイレの欧州統合思想
 一 ハイレの位置と意義
 二 ハイレと欧州協調連盟
 三 ハイレの「ヨーロッパ合衆国」構想
 四 ハイレの遺産
 第三節 第三帝国下の「中欧」の運命 カール・シュミットの広域秩序論
 一 シュミットの広域秩序論をめぐって
 二 広域秩序論の再構成
 三 シュミットが予示したもの
終章 「中欧」から「ヨーロッパ」へ? 結論と展望
 一 本書の知見
 二 「中欧」の視座とドイツ・ナショナリズムの重層性
 三 地域とナショナリズムをめぐって
 四 現代ドイツと欧州統合への展望
あとがき


著者
板橋 拓己(イタバシ タクミ)
1978年生まれ。政治学者。成蹊大学法学部教授。
北海道大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。専門は、国際政治史、ヨーロッパ政治史。
著書に、『中欧の模索』『アデナウアー 現代ドイツを創った政治家』『黒いヨーロッパ』『現代ドイツ政治』(共著)『歴史のなかの国際秩序観』(共著)『国際政治史』(共著)など、
訳書に、ジャック・ル・リデー『中欧論 帝国からEUへ』(共訳)アンネッテ・ヴァインケ著『ニュルンベルク裁判』ヤン=ヴェルナー・ミュラー『ポピュリズムとは何か』アンドレアス・レダー『ドイツ統一』などがある。

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