少年法と「甘え」(長崎純心レクチャーズ)
少年法と「甘え」(長崎純心レクチャーズ)
本商品は「旧ISBN:9784423301340」を底本にしたオンデマンド版商品です。
初刷出版年月:2015/06/01
叢書・シリーズ名:長崎純心レクチャーズ15
少年事件が発生すると、巷間では少年法が取りざたされ、厳罰化すべしとの声も多々聞かれる。果たして、犯罪少年は保護されるべきか、刑罰を科されるべきか。本書は、明治後期から今日に至るわが国の百年間の少年法の歴史的展開を、法史学的データをもとに追跡し、その過程を精神科医・土居健郎が掘削した「甘え」の社会心理をプリズムとして考察する。アメリカのパレンス・パトリエ(国親)法の影響から導入された感化法が明治33年に制定され、それを基盤として少年法は、第一次大戦後の大正11年制定、第二次大戦後の昭和23年と平成12年の改正という三つの節目を経てきた。この流れをたどりつつ、少年審判所、起訴便宜主義、保護観察制度などをめぐる議論を丁寧に繙き、法の構造を解明。さらに、1960年代以降、アメリカ社会に吹き荒れた脱保護主義の嵐と加速化する家族崩壊がアメリカ法を一変させ、児童の保護から権利へと大きく振れる様を描くとともに、家族法学者ヘイフェンと土居との出会いを紹介し、「甘え」という概念の普遍性を視野において西欧社会と日本社会との差異を論じる。少年法・児童法の歴史と思想という視座から、近代日本国制の特徴を浮かび上がらせ、教育さらには変貌する家族の行方をも見すえた必読書。
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序言 稲垣良典
目次
1 「子どもの楽園」の文化的基層
一 「子どもの楽園」
二 文化的伝統としての「甘え」と「親心」
三 「保護」の観念と「甘え」
2 転換期アメリカにおける少年裁判所と日本
一 留岡幸助と小河滋次郎 明治三三(一九〇〇)年感化法の制定
二 穂積陳重の見たアメリカ
三 アメリカ少年裁判所法の歴史的・社会的背景 「家族の分解」
3 日本における少年処遇の模索
一 早崎春香の「感化教育主義」
二 花井卓蔵の少年観と花井・床波論争
三 小山温の「厳父慈母」論 パレンス・パトリエヘの共感と反発
四 谷田三郎の回顧と法の立案
五 「保護処分」の概念
4 大正一一(一九二二)年少年法の構造
一 法の対象と理念
二 「起訴便宜主義」とその運用 「鬼面仏心」の構造
三 少年審判所の性格
四 「親子主従の情誼」 虞犯介入の謙抑主義
5 法制定をめぐる論争
一 内務省と司法省の確執
二 「社会事業調査会報告書」と少年法(限地施行)の成立
三 少年観におけるアメリカ法と日本法 二分思考か二面思考か
6 少年法「限地施行」の二〇年
一 「感化教育主義」の反撃 少年教護法の成立
二 保護観察制度の形成と少年法「全国施行」
7 GHQ改革と昭和二三(一九四八)年少年法 パレンス・パトリエとの第二の出会い
一 B・ルイスによる法改正の指導
二 共感と反発
三 法務省「少年法改正構想」
8 法務省「少年法改正要綱」
一 「改正要綱」の諮問とその背景
二 「改正要綱」の内容
三 法制審議会(少年法部会)による「改正要綱」の審議
9 平成—二(二〇〇〇)年少年法改正とその意味
一 経緯
二 平成—二年法改正
三 少年法運用における「保護主義」
四 保護処分優先主義の行方
10 アメリカ・パレンス・パトリエ少年司法の没落
一 ゴールト判決の周辺と少年法刑事司法化の歩み
二 パレンス・パトリエ少年司法の回顧
三 家族の崩壊 変貌の底にあるもの
四 「子どもの権利」
五 児童の権利条約
11 「甘え」と「Belonging」 B・ヘイフェンの場合
一 概説
二 土居健郎における「甘え」の発見
三 ヘイフェンにおけるBelongingとamae
四 amaeとBelongingの出会いの哲学的意味
五 あてにするということ
むすび
注
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著者
森田 明(モリタ アキラ)