英文学とキリスト教文学
英文学とキリスト教文学
近現代のキリスト教作家に焦点を当て、わが国では分かりにくい国教会諸派やカトリックの文芸運動との関連を解説、世俗化する社会や国際政治の変化も踏まえて作品を位置づけ、英文学におけるキリスト教文学の展開を論じる。さらには聖書学の成果を用いて福音書のイエス伝と小説のイエス像との関係を考察するとともに、批評理論の動向を見すえつつ、互いに影響し合う聖書と文学理論の深い関係を明らかにする。大きな物語、すなわち聖書に基づいた物語は終焉したとしたリオタールの主張を斥け、今日における文学の使命を示唆する、稀有なイギリス文学史。
【目次】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序論
一 「キリスト教文学」の背景
二 ニューマンと「カトリック文芸復興」
I ホプキンズとR・S・トマス 聖職者詩人
一 イエズス会詩人ジェラード・マンリー・ホプキンズ
二 ウェールズ教会詩人R・S・トマス
II エリオットとオーデン 国教会詩人
一 アングロ・カトリック詩人T・S・エリオット
二 ハイチャーチ詩人W・H・オーデン
三 エリオットとオーデン以後のキリスト教詩人
III 第二次大戦後のカトリック小説家
一 冷戦とカトリック小説
二 恩寵と罪 グレアム・グリーンの世界
三 伝統への回帰 イーヴィリン・ウォーの復古主義
IV 中流化とカトリック小説
一 イギリス小説 大衆読み物から文学へ
二 哲学的小説の世界 ミューリエル・スパーク
三 中流カトリック信徒の生き方 デイヴィッド・ロッジ
四 後続カトリック小説家とキリスト教作家
V イエスの生涯の小説化
一 聖書外典文学と小説
二 外典文学と第五福音書
三 新しい写本の発見とユダの福音
VI 聖書と最近の批評理論
一 批評理論と聖書批判
二 解釈学の契機への注目
三 オーサーの死と「本」の枠組みの崩壊
結び
一 聖書の代わりとしての文学作品
二 ポストモダンの状況とキリスト教文学
文献表
あとがき
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著者
高柳 俊一(たかやなぎ しゅんいち)
1932ー2022年。英文学者・神学者。上智大学名誉教授。上智大学文学部英文科卒業。フォーダム大学大学院で博士号取得。ザンクト・ゲオルゲン神学院にて神神学修士号取得。著書に、『人間と都市』『現代人の神学 キリスト論的素描』『ユートピアと都市 黙示思想の系譜』『都市の思想史 近代的市民像の源流』『精神史のなかの英文学 批評と非神話化』『英文学入門』『ユートピア学事始め』『T.S.エリオット研究 都市の詩人/詩人の都市』『T.S.エリオットの比較文学的研究』『聖書を読む 1 マタイによる福音書』『T.S.エリオットの思想形成』『知恵文学を読む』『カール・ラーナー研究 根底化と希望の思想形成』『英文学とキリスト教文学』などがある。
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